皆さんは今、住宅会社の倒産が過去10年で最悪レベルにまで増えていることをご存じでしょうか。
2024年度の建設業倒産件数は全国で1,890件にものぼり、住宅業界全体がかつてないほど厳しい状況に直面しています。
つい先日も、新潟市の住宅会社「ニコハウス」が自己破産を申請し、契約者が大きな被害を受けたニュースが報じられました。契約後に支払った数千万円が戻ってこない、工事が始まらない、土地だけが取り残される…。そんな悲劇が現実に起きています。
これからマイホームを検討している方にとって、このニュースは決して他人事ではありません。大切な家族の未来を守るために、「どんな住宅会社を選ぶべきか」を真剣に考える必要があります。今回は、実際の被害事例や業界の現状、そして被害を避けるための方法について、分かりやすく解説していきます。
◆ ニコハウス倒産の被害事例
まずは実際に被害に遭った方の例をご紹介します。
あるご家族は、ご主人と1歳半のお子さんの3人暮らしを夢見て、2023年12月にニコハウスと契約しました。翌年1月には地鎮祭も行い、住宅ローンで1,030万円の着工金を支払いました。しかし、3月ごろから会社と連絡が取れなくなり、返金を求めても対応はなし。そして5月に自己破産…。結果として土地は更地のまま、お金も戻ってこない状況に陥ってしまいました。
さらに別の方は、工事が始まらない中で2025年3月に「中間金」として1,000万円を支払いました。ところが、その直後に会社が破産。しかも破産についてはニュース報道で初めて知ったそうです。すでに資金繰りが行き詰まっていたのではないかという疑念も残り、場合によっては詐欺の可能性すらあると弁護士が指摘しています。

もしこのような事態に巻き込まれたら、夢のマイホームどころか家計全体が崩壊しかねません。ローンだけが残り、土地や建物が手に入らない…。まさに人生設計そのものが狂わされる恐ろしい事例です。
◆ ニコハウスが倒産に至った経緯
ニコハウスは2014年に設立されたローコスト住宅メーカーでした。比較的安価に新築やリフォームを提供しており、地元でも利用者が増えていました。しかし経営環境の悪化により次第に資金繰りが行き詰まります。
- 2020年:債務超過に陥る
- 2024年11月:消費税を納税できなくなる
- 2024年12月:業者への支払い遅延、金融機関からの融資停止
- 2025年5月:自己破産を申請(負債額約2億9,000万円)
この流れを見ると、少なくとも1年以上前から危険な兆候は出ていました。にもかかわらず、契約者に十分な説明がなされず、多くの人が大きな被害を受けてしまったのです。
◆ 被害を防ぐカギは「住宅完成保証制度」
ここで重要になるのが、住宅完成保証制度です。
この制度に加入している住宅会社と契約すれば、仮に会社が倒産しても他の会社が工事を引き継ぎ、家を完成させてくれる仕組みがあります。また、すでに支払った金額の一部が保証される場合もあります。
しかし、ニコハウスはこの制度に加入していませんでした。そのため契約者は何の補償も受けられず、資金を失う結果となったのです。
ではなぜ、多くの住宅会社がこの制度に入っていないのでしょうか。
理由は大きく2つあります。
- 登録条件が厳しい(健全な財務状況が必要)
- 「倒産に備えて保証を付けています」とお客様に伝えると、かえって不安を与えてしまう
このような事情から、全国で登録している会社はわずか320社程度。ニコハウスのあった新潟県内ではたった7社しか存在しません。
つまり、保証制度に加入しているかどうかを確認するだけでも、会社の健全性を測る目安になるのです。
◆ 今、住宅業界が直面している3つの課題
ニコハウス倒産は一例に過ぎません。業界全体が苦境に立たされており、大手でさえ例外ではありません。たとえばローコスト住宅の最大手「タマホーム」は、2024年度に49億円の赤字を発表しました。
背景には、次の3つの要因があります。
1. コロナ需要の反動
コロナ禍ではテレワークや巣ごもり需要で住宅需要が急増しました。しかし終息とともに需要が落ち着き、反動で契約が減少しています。
2. 資材価格と人件費の高騰
木材不足「ウッドショック」やウクライナ情勢による資材高騰、人手不足による人件費上昇。こうしたコスト増は企業努力では吸収しきれません。
3. ローコスト住宅モデルの限界

「安さ」を武器にしてきた会社も、コスト高騰で価格を維持できなくなっています。安さを求めていた層が住宅購入を諦めるケースも増加し、需要そのものが縮小しています。
これら3つの要因が重なり、ローコストメーカーを中心に経営破綻のリスクが高まっているのです。
◆ 一般の私たちができるリスク回避の工夫
「では実際に、私たち消費者はどうやって自分を守ればいいの?」
家づくりを考えている方にとって、一番気になるのはここだと思います。安心して進めるために大切なのは、「会社の選び方」と「契約の進め方」です。少し意識するだけで、大きなトラブルを避けられる可能性がぐっと高まります。
1. 住宅完成保証制度の有無を確認する
まず一番分かりやすいチェックポイントが「住宅完成保証制度」に加入しているかどうかです。
もし会社が倒産してしまっても、他の会社が工事を引き継いでくれたり、支払ったお金の一部が戻ってきたりする制度です。加入していない会社は、万が一の時に頼れる仕組みがないということなので、どうしてもリスクは高くなります。
2. 会社の経営状況を調べてみる
「そんなの調べられるの?」と思う方もいるかもしれませんが、実は調べられます。帝国データバンクや東京商工リサーチなどで信用調査を依頼すれば、会社の健全性を客観的に知ることができます。少し手間や費用はかかりますが、数千万円単位の買い物をすると思えば、安心材料として十分に価値がある情報です。
3. 支払いのタイミングを工夫する
契約時に支払いスケジュールをしっかり確認することも大事です。
着工前や工事の序盤で大きな金額を一括で払ってしまうのはリスクが高いので、できるだけ工事の進み具合に応じて分割払いにするのがおすすめです。例えば、基礎工事が終わったら一部、上棟が終わったらさらに一部、というように段階ごとに支払う形にすれば、万が一途中で会社にトラブルがあっても被害を最小限に抑えられます。
4. 複数の会社をしっかり比較する
「安いからここに決めた」「営業担当の人が感じが良かったから」――そんな理由だけで決めてしまうのは危険です。同じような金額でも、会社によって保証内容やアフターサービスが大きく違うこともあります。最低でも2~3社は比較して、見積もりや仕様、保証内容をじっくり見比べるようにしましょう。
5. 口コミや地域での評判をチェックする
インターネットのレビューも参考になりますが、それだけでは不十分です。実際にその会社で家を建てた人の声を聞くのが一番確かです。友人や知人からの口コミ、または地域での評判を聞いてみると、ネットには載っていないリアルな情報が得られることもあります。
◆ 家づくりは「リスクを知って挑戦する」もの
家づくりは人生の中でも特に大きな買い物といわれています。だからこそ、楽しい夢と同時に少しのリスクもあるのが現実です。
「住宅会社が倒産するかもしれない」なんて、あまり考えたくないことですが、実際には毎年1,000件以上もの会社が姿を消しているのも事実です。
ただ、心配しすぎる必要はありません。あらかじめリスクを知り、どう備えるかを考えておけば、安心して家づくりに向き合うことができます。
たとえば「住宅完成保証制度に加入しているか」「会社の経営が健全か」「支払い方法をどう工夫するか」など、いくつかのポイントを押さえておくだけで、万が一のトラブルに巻き込まれる可能性をぐっと減らせるのです。
◆ まとめ
- 2024年度の建設業倒産は1,890件、住宅業界は深刻な危機
- 新潟市「ニコハウス」倒産では、数千万円を失った契約者が多数
- 「住宅完成保証制度」の有無は重要な判断材料
- 資材高騰、人手不足、ローコストモデルの限界が業界を直撃
- 消費者は会社選び・契約方法でリスクを軽減できる
これから家を建てる方にとって、住宅会社の倒産リスクは決して遠い話ではありません。むしろ誰もが直面し得る現実的なリスクです。だからこそ、事前に正しい知識を持ち、慎重に選ぶことが何より大切です。
「安さ」や「営業トーク」に流されず、家族の未来を守れる住宅会社を選びましょう。リスクを知って挑戦することで、夢のマイホームはより確実に、そして安心して手に入れることができます。
皆さまの家づくりが安全で、幸せなものとなることを心から願っています。