最近、「建設業って危ないらしい」という話を耳にすることが増えています。ニュースでも建設業界の倒産件数が過去最多に迫る勢いで増えており、「工事を頼む会社も大丈夫なの?」と不安に感じる方も少なくないでしょう。
一般的には「小さな下請け会社の方が経営が不安定なのでは?」と思いがちですが、実際には 元請けの倒産が多い という意外な現実があります。元請けは街中の大きな建物やマンション、公共工事を手掛けることが多いため、倒産するとニュースにもなりやすく、私たちの生活に直接影響することもあります。
実際に、大規模な建築工事で元請けが資金繰りに行き詰まり、工事がストップしてしまうケースも起きています。このように、建設業の倒産は「業界の問題」にとどまらず、 私たちの日常生活や住まいに直結する身近なリスク なのです。
そこで今回は、なぜ元請けの倒産が多いのか、その理由と建設業界の現状・今後の見通しについてわかりやすく解説していきます。これを読めば、ニュースの裏側にある建設業界のリアルが見えてくるはずです。
※2026年1月の法改正により「下請け」という用語は廃止され、今後は「中小受託事業所」という表現に変更されます。
元請けと下請けの違い
まずは「元請け」と「下請け」の違いを整理しておきましょう。
- 元請け:お客様から直接仕事を受ける会社。建物全体の工事を引き受け、工程管理や資材調達を行います。
- 下請け:元請けから依頼を受け、専門分野(内装・電気・水道など)の工事を担当する会社や職人。
つまり、元請けは責任やリスクが大きく、下請けは元請けから仕事をもらう形になるため、 倒産リスクの分布も自然と変わってくる のです。
建設業界の倒産件数が増えている理由
帝国データバンクの調査によると、2024年度の建設業倒産件数は 1,890件。前年から約13%増加し、4年連続で増加、過去10年で最多となっています。
背景には主に3つの要因があります。
- 物価高の影響
建設業では、鉄筋や木材、セメントなどの資材が必要ですが、ここ数年で資材の価格が大幅に上昇しています。スーパーでの食品や日用品の値上げと同じように、建設資材も値上がりしているため、工事をしても利益が出にくくなっています。 元請けは資材の購入や工事全体の管理を担当するため、資材価格の上昇による影響を大きく受けます。原価が上がると会社の利益は減少し、最悪の場合、倒産につながることもあります。 - 人手不足
建設業は慢性的な人手不足に悩まされています。高齢化が進む中で若い労働者の数が追いつかず、作業を外部の下請けに依頼するケースも増えています。 自社で人をまかなえればコストを抑えられますが、外部に依頼するとその会社の利益も上乗せされるため、結果として経費が増えます。元請けはこの負担を抱えながら工事を進める必要があるため、経営が厳しくなるわけです。 - コロナ融資の返済
コロナ禍で多くの建設会社が銀行から融資を受けましたが、返済が始まると資金繰りが厳しくなります。元請けは資材や下請けへの支払いも先行して行う必要があるため、返済と資金繰りの両立が難しく、倒産に追い込まれるケースがあります。
なぜ元請けの倒産が多いのか?
「下請けの方が小さい会社だから倒産しやすいのでは?」と思われがちですが、現実は逆。理由は以下の通りです。
①入金までの期間が長い 元請けはお客様から工事代金を受け取るまでに、場合によっては 2〜3か月かかることも珍しくありません。しかし、下請けや職人には作業後すぐに支払いをする必要があります。つまり、元請けは「お金が入る前にお金を払わなければならない」状態になることが多く、資金繰りが厳しくなりやすいのです。

② 資材や機材の負担が大きい 元請けは建設資材や重機などを自社で準備する必要があります。そのため、 初期投資や運転資金が非常に大きく、資金繰りがうまくいかないと経営が一気に厳しくなります。 例えば、大規模なマンション工事では数千万円単位のコンクリートや鉄筋、足場の設置などが必要です。これらは全て元請けが先に手配・購入することになるため、仕事が進んでもすぐに利益が出るわけではありません。この資金の先行負担が、倒産リスクを高める一因になっています。

③ 設備投資や受注の減少 建設業界全体が厳しい状況になると、企業は新規の設備投資を控える傾向があります。その結果、元請けは新しい仕事を受注できず、 倒産リスクがさらに高まる ことになります。特に景気の影響を受けやすい建設業では、公共事業の減少や民間の建設需要の停滞が直接的に元請けの経営に響きます。
建設業界の今後の見通し
短期的には依然として厳しい状況が続く見込みです。
- コロナ禍で多くの建設会社が銀行から融資を受けました。これらの返済は最低でも 5年間続く と言われており、資金繰りへの圧迫は当面続く見込みです。 たとえば、大規模なマンション工事を手掛ける元請け会社では、建材費や人件費の先行負担が大きく、返済が重なると経営が非常に厳しくなります。資金繰りの問題は、工事の遅延や予定変更につながることもあるため、私たちの生活にも影響が出る可能性があります。
- 2024年問題として話題になっているのが、建設業界における 賃上げや残業の上限規制 です。国の方針で、働き方改革の一環として残業時間の上限が厳格化されると、企業は人件費の負担が増えることになります。 これにより、元請け企業は社員を増やしたり、より高い賃金を支払う必要が出てきます。経営者にとってはありがたい制度ではありますが、一方でコストの増加が経営圧迫の一因となり、倒産リスクを高める可能性があります。
- 建設資材の価格や日用品の値上げも、建設業界を悩ませる要因です。鉄筋や木材、セメントなどの資材はもちろん、燃料費や輸送費も上昇傾向にあります。元請け会社はこれらを先に負担するため、工事が完了してもすぐに利益が出にくい状況です。
ただし建設業は、国内で 10人に1人以上が関わる巨大産業。生活インフラを支える不可欠な業界であり、長期的には改善の可能性も十分にあります。
まとめ
建設業界では「元請けの倒産が多い」という意外な現実があります。
元請けはお客様と直接契約し、工事全体の管理や資材の調達、下請けの取りまとめなど大きな責任を抱えています。その分リスクも大きく、資材の値上がり、人手不足によるコスト増、そしてコロナ禍の融資返済などが重なり、経営を圧迫しているのです。
一方で、下請けは件数が多く短期での支払いが中心のため、資金繰りは比較的安定しており、倒産の割合は元請けより低い傾向があります。
とはいえ、建設業は私たちの暮らしに欠かせない産業です。国内では「10人に1人以上が関わっている」と言われるほど規模が大きく、街の建物や道路、橋、学校など、日々目にするインフラを支えています。たとえば、通勤や通学で毎日利用する駅や道路、休日に訪れるショッピングモールも、すべて建設業界の人々の努力によって成り立っています。
短期的には厳しい状況が続くものの、近年は「省エネ住宅」や「リフォーム需要の増加」、さらには「災害対策のための公共工事」など、新たな需要が生まれています。こうした分野にうまく対応できる企業は、今後も成長のチャンスをつかむ可能性があります。
私たち消費者も建設業界の現状を知ることで、安心してサービスを利用できるだけでなく、「今後どんな建物や街がつくられていくのか」にも関心を持てるようになります。建設業は単なる「建物を建てる仕事」ではなく、未来の街づくりや暮らしの安全に直結する重要な産業なのです。