「リビングのリフォームの見積もりを取ったら、『巾木(はばき)交換』って項目があるけど…巾木って、そもそもなに…?」
リフォームを考え始めたばかりなら、そう思っても不思議ではありません。僕もこの業界に入るまで、巾木なんて全然知らなかったです。「巾木って何ですか?」って設計士さんに聞いて「あー、新人さんだな」って苦笑いされた記憶があります。
実はこの巾木、選び方ひとつで部屋全体の印象をガラリと変えてしまう力を持っているんです。巾木の選び方や施工方法を間違えると、せっかく何十万円もかけたリフォームが「…思ってたのと違う…」という、残念な結果を招くことさえある。
これは、実際に僕が多くのリフォーム現場を見てきた中での、偽らざる実感です。
この記事では、そんな見過ごされがちな「巾木」の世界を、少しマニアックに、でも分かりやすく深掘りしていきたいと思います。これを読めば、あなたのリフォームが間違いなくワンランク上の仕上がりになるはずです。
そもそも「巾木」って、何のために付いているの?

「壁を保護するためでしょ?」多くの方がそう思っているかもしれません。もちろん、それも大きな役割の一つ。でも、実はそれだけじゃない、もっと構造的に重要な役割があるんです。
フローリングの「隙間」を隠す、大事な目隠し役
無垢材だけでなく一般的な複合フローリングも、木でできている以上、室内の湿度によってわずかに伸び縮みを繰り返しています。フローリングを壁際にピッタリと隙間なく施工してしまうと、湿気で木が膨張した時に、逃げ場がなくなって床が盛り上がってしまう。なんてことが起こりかねません。
それを防ぐためにプロの大工さんは、必ず壁際に数ミリ程度の「隙間」をわざと空けてフローリングを施工します。巾木は、その機能上必要な「隙間」を見栄え隠してくれる、という非常に大切な役割を担っているのです。
掃除機の一撃から壁紙を守る、縁の下の力持ち
そして、もう一つの役割が、皆さんがご存知の「壁の保護」です。
掃除機をかける時、ガツン!とヘッドを壁にぶつけてしまった経験、誰にでもありますよね。もし巾木がなければ、壁紙(クロス)はすぐに破れたり、黒ずんだりしてしまうでしょう。
椅子のキャスターや、子どものおもちゃがぶつかる衝撃からも、デリケートな壁紙を守ってくれている。まさに、縁の下の力持ち的な存在なんです。
その巾木、ダサ見えしてない?素材とデザインの基本ルール

さて、ここからが本題です。巾木が部屋の印象を大きく左右する、その理由。それは「素材」「高さ」「色」という3つの要素にあります。
塩ビ製の「ソフト巾木」と高級感ある「木巾木」
巾木には、大きく分けて2つの素材があります。
| ソフト巾木 | 木巾木 | |
| 素材 | 塩化ビニルでできた、少し柔らかい素材 | 木製(あるいは木質素材にシートを貼ったもの) |
| 特徴 | 水に強い | 高級感がある |
| 主な用途 | 洗面所やトイレ | リビングや寝室など、居室 |
| コスト | 安い | ソフト巾木に比べて高い |
ここで一つ、注意点。築年数の古いマンションなどでは、コストを抑えるために、リビングなどの居室にもソフト巾木が使われているケースが少なくありません。
リフォームの際に、何も考えずに「現状復帰で」と業者に任せてしまうと、また同じソフト巾木に交換されてしまう可能性があります。せっかく床や壁紙を新しくするなら、居室の巾木は「木巾木」にグレードアップすることを、僕は強くおすすめします。
トレンドは「低く、細く」存在感を消すのが今っぽい
次に「高さ」です。これも、時代によってトレンドが大きく変わるポイント。
昔の家、特に少し凝った造りの家だと、高さが7cmもあるような、幅の広い巾木が付いていることがあります。なんだか、袴(はかま)を履いているような、少し重たくてゴツい印象を受けませんか?もちろん、これにはこれの良さもあるのですが…
一方で、現在の標準的な巾木の高さは5cm前後。よりスタイリッシュさを求めて、3cm程度の極細タイプを選ぶ方も増えています。巾木に限らず、最近の内装デザインのトレンドは「いかに部材の存在感を消すか」という方向。巾木も、できるだけ低く、目立たないものを選ぶのが今っぽい選択と言えるでしょう。
色選びの黄金ルール「床に合わせる」から「壁に合わせる」へ
そして、これが最も部屋の印象を変える「色」選びです。
30年くらい前の物件でよく見るのが、茶色いフローリングに、同じような茶色い巾木を合わせるスタイル。これはこれで統一感はありますが、どうしても巾木の存在感が際立ち、少し野暮ったく見えてしまいがち。
そこで僕が提案したいのが、巾木の色を「床」ではなく「壁(のクロス)」に合わせるという考え方です。
ほとんどの家の壁は白いクロスだと思います。そこで、巾木も同じ「白」を選ぶと…どうでしょう。巾木が壁にスッと溶け込んで、その存在感が消えます。
結果として、壁と床の境界線が曖昧になり、部屋が広く天井が高く見えるという視覚効果が生まれるのです。これは、写真で見比べると一目瞭然。濃い色の床に白い巾木を合わせるスタイルは、空間をモダンで洗練された印象に見せてくれます。
プロの仕事は「角」を見ろ!留め切りとキャップの決定的な違い

ちょっとマニアックな話になりますが、リフォーム業者の「腕」が透けて見えるポイントがあります。それが、巾木の「角」の処理の仕方です。
スタイリッシュな「留め(とめ)切り」
壁の出っ張っている角(出隅)の部分で、巾木の端をそれぞれ45度にカットし、ピッタリと突き合わせて直角を作る。この、職人技が光る収め方を留め(とめ)切りと言います。
隙間なく美しく角を収めるには、正確な採寸と、精密なカットの技術が必要。手間はかかりますが、見た目は非常にスッキリとしていて、シャープな印象に見えます。腕の良い大工さんは、ほぼ間違いなくこの方法で施工するはずです。
施工は楽だけど…もっさり見える「プラスチックキャップ」
一方、最近の建売住宅などでよく見られるのが、巾木の角にプラスチック製のキャップを被せて収める方法です。
巾木を斜めにカットする必要がなく、ただ真っ直ぐ切って突きつけ、上からキャップを被せるだけ。言ってしまえば、大工さんの技術があまり必要なく、施工が早く楽に済みます。
しかし、その見た目はどうでしょう。木製の巾木の角に、取って付けたようなプラスチックの塊。正直なところ、かなりもっさりして見えます。角が丸くなるので安全、という意見もありますが、デザイン性を重視するなら、僕は断然「留め切り」をおすすめします。
【要注意】うちの巾木、交換できないかも?リフォーム前の確認ポイント

最後に、リフォームを考える上で、特に古い物件にお住まいの方が注意すべき点をお話しします。
古い物件に潜む「埋め込み巾木」の罠
今の巾木は、壁の石膏ボードができた後に、その上からペタッと貼り付けるのが一般的です。しかし、古い物件の中には、巾木の上に石膏ボードが乗っている「埋め込み巾木」という特殊な構造のものがあります。
この場合、巾木を交換しようとすると、壁の下の方を一度壊して、巾木を引っこ抜き、また壁を補修する…という、非常に大掛かりな工事になってしまう。費用も時間もかさむため、現実的ではありません。
そんな時は、既存の巾木の上から塗装で色を変える、という方法が有効です。昔の巾木は塗装が乗りやすいものが多いので、壁に合わせて白く塗ってしまうだけで、驚くほど印象がスッキリします。
床のガタガタを救う「不陸調整付き巾木」という選択肢
マンションなどで、コンクリートの床が少し波打っている(不陸がある)場合、普通の巾木を付けると、床との間に隙間ができてしまうことがあります。
そんな時に役立つのが、巾木の下端に柔らかいゴムが付いている不陸調整付き巾木。このゴムが、床のわずかな凹凸を吸収し、隙間なくきれいに見せてくれるという優れものです。こんな便利なアイテムもある、ということを知っておくと、いざという時に役立つかもしれません。
あなたのリフォームを、ワンランク上の仕上がりに

いかがでしたか?単なる「壁の保護材」だと思っていた巾木が、実は部屋の印象を決定づける、奥深いデザイン要素であることが、お分かりいただけたでしょうか。
もし、あなたがこれからリフォームの見積もりを取るなら、ぜひ、業者さんにこう伝えてみてください。
「巾木の色は、壁に合わせて白でお願いします。高さは5cmで、角の処理は『留め切り』で仕上げてください」
この一言を面倒くさがらずに、きちんと理解し対応してくれる。そんな業者こそが、あなたの理想の家づくりを任せるにふさわしい、本当のパートナーです。あなたのその「こだわり」が、リフォームの成功を左右する、大きな一歩になるはずです。