「うちの屋根、瓦だから塗装なんて必要ないでしょう?」
そう思っているなら、少しだけ注意が必要かもしれません。一言で「瓦」と言っても、その素材によってメンテナンスの方法が全く異なります。
特に、40~50年ほど前に建てられた、昔ながらの日本家屋によく使われている「セメント瓦」。見た目は重厚で頑丈そうに見えるこの屋根材…実は定期的な塗装メンテナンスが不可欠なんです。メンテナンスを怠ると、大きなトラブルに繋がる可能性があることはご存知でしょうか。
この記事では「セメント瓦」の特徴、そして見逃してはいけない劣化のサインについて、分かりやすく解説していきます。
そもそも「セメント瓦」とは、どんな屋根材?

まずは、セメント瓦がどのようなものなのか、その基本的な特徴から理解していきましょう。
1970~80年代に流行した屋根材
セメント瓦は、その名の通り、セメントと砂、水を混ぜて成形された瓦です。1970年代から1980年代にかけて、日本の住宅で広く普及しました。
セメント瓦は形も様々で、
- 伝統的な日本家屋に見られる波型の「和形」
- 洋風住宅に合う平らな「洋形」
- S字のカーブが特徴的な「S形」
多様なデザインに対応できるのが特徴です。比較的安価で、デザインの自由度も高いことから、多くの住宅で採用されていました。
セメント瓦が持つ、2つの大きな特徴
このセメント瓦には、知っておくべき重要な特徴が2つあります。
1. 衝撃に弱く、ひび割れしやすい
セメントでできているため、重くて頑丈なイメージがあるかもしれません。しかし、実は衝撃には弱く、物が当たったり、人が乗ったりすることで、意外と簡単にひび割れ(クラック)が入ってしまうという弱点があります。
瓦割りのパフォーマンスで使われる、あの瓦を想像すると分かりやすいかもしれません。ひび割れを放置すると、雨水が屋根の内部に侵入し、雨水によって木材を腐らせたり深刻なダメージに繋がる恐れがあります。
2. 瓦自体に「防水性」はない
そして、これが最も重要なポイントです。スレート屋根(コロニアル、カラーベスト)などと同じように、セメント瓦の素材自体には、水を弾く「防水性」がありません。
では、どうやって雨から家を守っているのか。それは、瓦の表面に塗られている「塗料」の力です。工場で成形されたセメント瓦の表面に、防水性を持つ塗料をコーティングすることで、初めて屋根材としての機能を発揮するのです。瓦の裏側と表側で、質感がツルツル、ザラザラと違うのは、この塗装の有無によるものなのです。
なぜセメント瓦には「塗装」が必要不可欠なのか?

セメント瓦の素材自体に防水性がないため、塗装が必要です。この塗料について深堀りしていきましょう。
塗料の劣化が、防水性の喪失に直結する
瓦の表面を覆っている塗膜は、家を守るため常に紫外線や雨風にさらされています。そのため、時間の経過と共に、徐々に劣化し防水性能を失っていきます。
当然、防水性が失われると、セメント瓦は雨水を吸い込むようになってしまいます。水分を吸ったり乾いたりを繰り返すうちに、瓦の素材そのものが脆くなり、やがて大きなひび割れや欠けに繋がってしまうのです。
ひび割れた部分から雨水が建物内部に侵入すれば、雨漏りを引き起こし、建物の寿命も縮めてしまう結果に…
塗装メンテナンスの目的とは?
ここまで説明してきたように、セメント瓦の塗装メンテナンスの目的は、単に見た目をきれいにすることだけではありません。最大の目的は、劣化してしまった塗膜を新しく作り直し、失われた防水性を回復させることにあります。
定期的に塗装を施し、瓦の表面を塗料で保護し続けること。それこそが家を長く、健康に保つための、唯一にして最も重要なメンテナンスなのです。
見逃さないで!セメント瓦の塗り替え時期と劣化のサイン

では、その重要な塗装メンテナンスは、いつ頃行うべきなのでしょうか。ここでは、塗り替えの目安となる年数と、ご自身でも確認できる劣化のサインをご紹介します。
塗り替えの目安は「およそ10年」
強い日差しや厳しい雨風から家を守ってくれているセメント瓦。その表面の塗料が劣化し始めて、塗り替えの検討が必要になる目安は「およそ10年」と言われています。
たった10年だけ!?とは思うかもしれません。もちろん、立地環境や使用されている塗料の種類によって多少の差はあります。ですが、防水性を維持するためには、10年に一度の塗り替えこそが家の寿命を延ばす上で非常に重要です。
必ず10年に一度という訳ではありません。ですから、専門家による点検は定期的に行うことをオススメします。
あなたの家の屋根は大丈夫?4つの劣化症状セルフチェック
「10年」という数字はあくまで目安。より具体的に、塗り替えの必要性を判断するための、代表的な劣化症状を4つご紹介します。
- 色あせ・変色
新築の頃と比べて、屋根の色が全体的に白っぽく、くすんで見える状態です。これは、塗膜の表面が紫外線の影響で劣化し始めている、初期のサインです。毎日見ていると気づきにくいかもしれませんが、久しぶりに昔の写真と見比べてみると、その変化に驚くかもしれません。 - カビや藻、コケの発生
塗膜の防水性が低下によって瓦の表面が湿った状態になると、カビや藻、コケが発生しやすくなります。屋根が緑色や黒っぽく変色している場合は、かなり劣化が進行している証拠です。 - 塗膜の剥がれ
劣化がさらに進行すると、塗膜がパリパリと剥がれてきます。この状態になってしまうと、セメント瓦の素地がむき出しになり、雨水を直接吸い込んでしまうため非常に危険な状態です。 - 瓦のひび割れ・欠け
最も深刻な劣化症状です。この状態を放置すれば、雨漏りに直結する可能性が非常に高いため、早急な対応が必要です。ひび割れた瓦は塗装では補修できないため、瓦の交換が必要になります。
これらの劣化症状が一つでも見られる場合は、一度、塗装の専門会社に相談し、屋根の状態を詳しく診断してもらうことを強くお勧めします。
セメント瓦の屋根塗装、塗り替えにかかる費用はどのくらい?

ここまで読んで、「実際に塗装すると、いくらくらいかかるのだろう?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
セメント瓦の塗装費用は 屋根の広さ・勾配・塗料の種類・下地補修の有無 によって大きく変わります。一般的な住宅(30坪=約100㎡)を例にすると、以下のような相場が示されています。
- シリコン塗料の場合:約53万円前後
- フッ素塗料の場合:約64万円前後
👉 出典:城北瓦産業株式会社
また、塗料の種類ごとに㎡単価の目安も公開されています。
- シリコン塗料:約2,000~3,000円/㎡
- フッ素塗料:約3,200~4,000円/㎡
👉 出典:リフォーム匠.com
さらに、小規模な屋根(30㎡前後)の場合は、次のような費用感になります。
- シリコン塗料:10万~13万円
- フッ素塗料:16万~18万円
👉 出典:株式会社カミセイ
使用する塗料のグレードや屋根の状態によって費用は大きく変動します。大切なのは、「安さ」だけで選ぶのではなく、屋根の状態を正しく診断したうえで最適な塗料・工法を選ぶこと。それが結果的に、家を長持ちさせ、将来的な修繕コストを抑えることにつながります。
まとめ:大切な家を守るための、正しい知識と早めの点検

かつて日本の多くの家を守ってきた、セメント瓦。その重厚な見た目とは裏腹に、塗装による防水保護が不可欠なデリケートな屋根材である、ということがお分かりいただけたでしょうか。
今回のポイントを、もう一度おさらいしましょう。
- セメント瓦は、素材自体に防水性がなく、表面の塗装によって防水機能が保たれている。
- 塗装が劣化すると、瓦が雨水を吸い込み、ひび割れや雨漏りの原因となる。
- 防水性を維持するため、およそ10年を目安とした定期的な塗装メンテナンスが必要不可欠。
- 「色あせ」「コケの発生」「塗膜の剥がれ」「ひび割れ」は、危険な劣化のサイン。
「うちの家はセメント瓦だ」と分かっている方も、そうでない方も、この記事をきっかけに、一度ご自宅の屋根を見上げてみてください。そして、もし気になる症状が見られたら、「まだ大丈夫だろう」と見て見ぬふりをするのではなく、勇気を出して専門家に相談してみましょう。
大切な家により長く、そして安心して住み続けるために、正しい知識を持ち、早め早めの点検とメンテナンスを心がけること。それが、何よりも重要なのです。